難しさの本質を理解した上で前進か退却かを決めるべき
社労士試験では例年60%~70%程度の得点ができれば合格できることがデータ上明らかです。平成28年度は択一式、選択式共に60%の得点で合格です。5問のうち2問を間違えたとしても合格点に達する…ハードルとしては決して高いものではありません。
にもかかわらず、そのハードルを越えることのできる人が100人中10人もいない現実。受験のする・しないを決定する上では、この「なぜ?」に明確な答えを出す必要があります。
受験者の9割以上が6割の正解率すらクリアできないというこの事実は、一言で言えば、それだけ本試験の問題を得点することが「難しい」ということに他なりません。ですが、その「難しい」の捉え方を見誤ると、その後に進む方向性をも見誤ります。
では、ここでいう「難しさ」とはどのような難しさなのでしょうか?
なぜ択一式試験で60%の得点ができないのか?
まず、この試験の難しさは、どの学校のテキストにも市販の書籍にも載っていない知識が、出題の40%以上を占めるということにあるのではありません。
60%の得点を確保するために必要となる、どの学校のテキストにも市販の書籍にも載っている知識を身に付け、それを正確な記憶として維持し続けることの難しさにあります。
言い換えますと、60%の得点をあげられるだけの知識の量(=10科目分のテキストの内容)が、人間の記憶の限界を超えているのでは?と思えるほどに多いことから、その知識を正確な記憶として本試験当日に身につけている人が全体の10%もいないということです。
どの本にも記載されていない内容を本番で得点できないと合格できないということであれば、それは国家試験の体を成していません。世にある受験対策そのものの価値が無意味化してしまいますし、実際にそのようなことはありません。
実は、100人中10人に満たない合格者ですら、正確な記憶をもってして問題をスラスラ解けているという人はほとんどいないと思われます。つまり、この試験に臨む殆どの人は、どの科目のどの知識も多くがうろ覚えの状態のままで本番を迎えています。
うろ覚え状態では正解選択肢の判断を容易に見誤るほどに、本試験問題は巧妙に作られています。つまり、合格する人と不合格に終わる人との違いは、正確な記憶とうろ覚えの知識の多寡にあります。細かな知識量やこなした問題量の違いによるのではありません。
受験の意思決定は自身の適性をよく考えてから
試験では法令が問われますので、難しさの中には理解することや問題を読み解くことの難しさ(=内容が高度)という側面もちろんあります。
ですが、それ以上に「単に覚えていれば解けるし、そうでなければ解けないという暗記事項」。これがあまりにも多すぎることから、殆どの人が覚えきれないままに本試験を迎えて、そこで失点を重ねて得点が6割を割ってしまう。このことが合格を難しくしている1つの決定的な要因です。
ですので、これから受験をどうしようかと考えている方は、自分がそうした大量の事項を正確に記憶(≠暗記)していくという学習をやりたいと思えるのかどうか?適性的に向いているのかどうか?ここを最初によく考えなければなりません。
大型書店の専門書コーナーに行けば、テキストに記載のある労働社会保険諸法令の知識などは氷山の一角なのだとわかります。
試験委員は各スクール・出版社のテキストの内容を踏まえて出題するわけではありません。
本試験で全く知らない知識が出題されることは、普通のことと考えておきましょう。
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