過去問の再出題率は年々低下してきている
最近年の社労士試験の問題を選択肢単位で見たとき、それが過去10年間に出題されたものの中からそのまま(もしくは若干の問題文の表現を変えただけで)出題されたというものはどのくらいあるのでしょうか?
この過去問リピート率はおよそ2割~3割弱といった程度でしょう。大昔は5割程度もあったと言われるこの割合は、年々減少傾向にあります。
その代わりに増えてきている問題が、過去に出題されたことのある問題と同じ論点であっても
★ 個数問題、組み合わせ問題として出題
★ 別の試験で(択一式⇔選択式)出題
★ 選択肢の正誤を逆にして出題
されたものなどです。単に過去問題集の正答率を上げることのみによっては対応できない問題が多く出題されてきています。また、試験ではこれらの問題に加えて、
★ 最新の改正項目や統計(過去問題なし)
などが出題されるわけです。ですから、もし仮にあなたから社労士試験合格の秘訣を尋ねられた過去の合格者が、
「とにかく過去問が大事。過去問を学習の中心に据えて、繰り返しやることだよ。」
と答えた場合、そのアドバイスはあながち間違ったものとまでは言えませんが、これをそのまま鵜呑みにしてはいけません。この助言を受けたあなたは、上述の出題の傾向を正しく認識した上で過去問に向き合う必要があります。
繰り返しになりますが、現在の社労士試験は単に過去問演習を繰り返すことで合格できる性格の試験ではありません。過去問を解くという学習にはある程度のところで区切りをつけて、次の段階の学習に進む必要があります。
過去問を”解く”学習には限界点とムダがある
ここで間違えないでいただきたいのは、過去問の再出題率が低下してきているからといって、重要度までもが低下しているのではないということです。
過去問を半分も正解できないでいるうちは、他のことに手を出しても仕方がありません。過去問は基礎力を固めるツールとして、目的を持って相当にやり込む必要があります。
ここで申し上げているのは、ほぼ100%の正解ができるようになるまで過去問をひたすらに”解く”という学習方法をとり続けることのムダについてです。
過去問題集には、その年だけにたまたま出題されたイレギュラーな問題や、正答率の極端に低かった難問も含まれています。そのような問題を正答できるようになるまで繰り返し解くことに大きな意義はありません。
また、何度も問題を解いているうちに、その正誤を覚えてしまいます。問題文の冒頭の表現を見ただけで反射的に正誤が頭に浮かぶような問題にあっては、文章を読んで考えるということをやらなくなってしまいます。
極端な場合には問題集のページをめくった瞬間に「このページの答えは上から順に○○×○○だったな」などという記憶が蘇ってきます。このような状態で”演習”を重ねて現在の正答率は○%などと言っていても全く無意味であることは言うまでもないでしょう。
したがって、過去問を”解く”という使い方には、一定のところで見切りをつける必要があるのです。
過去問は解いた回数が重要なのではありません。自力で解く以外の使い方が最も大切になります。実際の過去問の利用の仕方については「過去問学習は未来問を考える発想で」の項で述べます。
択一式試験の対策では、五肢の中から解答を選ぶ実戦訓練が最終的に重要です。
過去問論点については、これを初見の長文選択肢の中に見つけた際に即応できること、その上で、選択肢を切った(残した)判断過程と結果の妥当性を検討することが必要になります。
過去問はこのプロセスにおいて重要です。
社労士試験では、出題者が「社労士を目指すならば、こういうことは最低限知っておいてもらいたい。」と考える事項が出題されます。
50年を超える試験の歴史の中で、そこに時代の変化や法令の改正、出題者の交代があっても大切と考えられる要素。
その共通点が結果としての再出題となるものです。
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