受験生によって異なる過去問への向き合い方
資格試験や検定試験、大学受験などでは過去問を解くことが最も重要であると言われます。
まず、過去問を解くことによって、実際の試験での出題形式や問題の傾向・難易度・分量、頻出事項などがわかります。また、実際に時間を測って問題を解くことによって、時間配分の感覚も身に付きます。他のどんな練習問題集や予想問題集にも勝る最重要の問題集、それが過去問題集です。
このことは社労士試験においても同様です。受験対策の中でこの過去問題集を本番直前の腕試しとして、試験1か月前に初めて解くという人はまずいないでしょう。
なぜならば、現在ある過去問題集の多くが年度別ではなく、科目別・項目別の構成をとっているからです。つまり、殆どの社労士受験生は、この過去問題集を学習の初期段階からその進行に合わせて使っているわけです。この使用開始時期に大きな違いはありません。
受験生によって違いが分かれるのは、この過去問題集に1度取り組んだその後の、この問題集への向き合い方です。つまり、
★ 何年分の問題を解けばよいのか?
★ 択一式問題集では正答率が何割に達するまで行えばよいのか?
★ 選択式問題集については行う必要がないのか?
★ 試験のどれだけ前までに終えればよいのか?
こうした点に対する受験生の考え方が一様ではないということです。そして、この過去問題集に対する向き合い方や考え方の違いは、後の合格・不合格に大きく影響を与えています。
ですので、過去問題集を解く目的を正しく理解することが大切になります。しかし、この理解のないままに、時間の許す限りできるところまでやろうと過去問演習に躍起になっている受験生が多いのです。
過去問への取り組みスタンスは試験の性格によって決まる
では、過去問に対するスタンスを決定する上での決め手になるものは何でしょうか?
それは、「過去問題集が完璧に解けることによって、次の本試験では合格点がとれるのか?」という視点です(法改正・統計・白書部分は除く)。
この答えがイエスであるならば、過去問は正答率が100%になるまで10回も20回も繰り返すべきです。しかし、答えがノーであるならば、正答率100%を目的にしても仕方がないということになります。
答えがイエスである試験の代表的なものは、普通自動車免許の学科試験です。この試験を教習所で渡された教本を隅から隅まで読み込んで受験する人は少ないと思います。
おそらく殆どの方が、問題集のみを何度か繰り返して受験されるはずです。そして、それで合格点である90点以上は取れます。なぜならば、問題集から逸脱した問題や新傾向の出題形式といったものがなく、問題集とほぼ同じ内容の出題がされるからです。
このような出題がされる試験は、他に民間団体の主催する資格・検定試験などにも多く見られます。これらの試験での過去問利用は正答率100%を目的にすればよく、それ以上の対策は必要ありません。
それでは、社労士試験の場合はどうでしょうか?
先の答えはノーです。時間がないから過去問だけでも完璧にしようという学習姿勢は、残念ながら試験の本質からはズレたものであるということを、本試験の場で思い知らされる結果となります。
引き続き「再出題率に応じた過去問への取り組み方」の項で、この過去問学習を考えます。
社労士試験の合否を分ける要因の1つは「当てはめ力」です。
現在の試験では、過去問と寸分違わぬ問題は殆ど出題されません。
初見の問題に対し、既知の論点や条文知識の記憶を当てはめて正答を導くという力が求められます。
これを単なる法的知識の問われる暗記試験と見誤ると、受験の長期化を招きます。
「当てはめ力」は、模擬試験などの初見の問題を時間を計って解く訓練を行うことによって磨くことができます。
しかし、その訓練を行うためには、前提として当てはめる知識そのものを強固にするための訓練が必要です。
それが過去問学習と呼ばれるものであり、その意味で過去問は重要なものです。
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