過去問を”解く”だけの学習は不十分な学習
現在の社労士試験は、過去問を繰り返し解くだけの受験対策で合格点が取れるようになるとは言えません。それでは、どのような対策をとったら良いのでしょうか?
【2】 過去問を数回転する際は、その都度使い方を変えること
結論としては、この2つのことを意識した受験対策が必要になります。
過去問演習を数回行って正誤の判断と誤っている箇所の理由を正しく指摘できるようにする、という学習自体は間違ったことではありません。ただ、このことが目的になっている学習は、過去の出題実績を踏まえた上での”次の出題への準備”という点でまだ不十分なのです。つまり、
【2】 過去問数回転が全て”解く”という同じ使い方である
という点が、過去の出題の歴史の振り返りに留まっているということです。
急がば回れの発想でテキストと連動した学習を
まず【1】に関して、過去問を学習した後にテキストに戻っての学習がない場合には、過去未出題の分野からの出題に全く対応ができません(例:H29健保選択式A~C)。択一式試験で合格点を確保していたとしても、選択式の1問のみで不合格ということが起こります。
合格に必要な力を仮に100だとすれば、過去問演習はそれを短時間で効率よく60~70に引き上げるという部分で最も効率的な学習法ですが、残りの30~40はテキストに戻って補う必要があるのです。
【2】に関しては、例えば科目別・項目別で一問一答形式の過去問の場合、学習段階に応じて
↓
② テキストに過去問のひっかけ論点を転記したり、キーワードをマーキングする(情報の一元化)
↓
③ 実際に問題が解けるかどうか自力で解く
↓
④ 他の科目に学習の中心が移った後に、③で誤ったもの、解答根拠の不確かだったもののみを再度解いて、該当箇所と周辺論点をテキストで確認する
というふうに使い方を変えていくことで、効果的な学習が可能になります。テキストを加工し、これを元に過去の出題実績に裏打ちされた将来の出題を考えていくわけです。ここで用いる過去問は7~10年分もあれば十分でしょう。
このような学習は面倒くさい、時間がかかると思われるかもしれません。しかし、問題文の冒頭を見ただけで正誤を暗記してしまっている過去問の”演習”だけを行っても意味がありません。受験生活が何年にも及んでいるという方こそ、こうした利用方法をとってみてください。
また、過去問学習の後にテキストに戻っての学習がない場合は、論点の把握が甘くなりがちです。
正解が○の問題の場合、黒色の文字一色で太字強調のない過去問題集の解説は、出題箇所の論点を意識しないままに読み流してしまいます。また、×の問題の場合にも、誤りの箇所の論点のみに意識が働いて、その問題の他の論点には意識が及ばないのです。
こうした他の部分の論点が、次の試験で過去問アレンジ問題として出題されるというのがこの試験の特徴です。だからこそ、過去問学習の後は将来の出題への備えとして、重要なキーワードや論点が太字や色文字で示されているテキストに戻る必要があるのです。
テキストは本試験で出題された内容を加味する形で毎年の改訂が行われます。
試験日時点では未知の出題であった事項も、最新テキストの読後であれば既知の事項になっています。
だから、過去問を解いて「わかる!」となるのは当然のことです。
過去問学習ではこの点を意識しておく必要があります。
テキストであれ過去問であれ、受験対策は必ず本試験の出題実績を踏まえての後追い学習になります。
つまり「この点がわかっていれば、この問題が解ける」という既出論点の習得が学習の中心です。
後追い学習は合格点をとるための基本ですが、これだけでは不十分であることを知っておく必要があります。
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