肢別過去問題集を用いた学習の到達目標
受験生が日々の学習の中心に置いている過去問題集は、科目別・肢別に編集された択一式試験対策のものです。
この問題集は、各科目のコアとなる知識を身につける教材として「過去問学習は未来問を考える発想で」の項で述べたような使い方でこれを3~4回程度は利用して、自力正答率を高めていく必要があります。
しかし、この肢別過去問題集の正答率が概ね全体の80%~90%にまで高まれば、これを100%まで引き上げようというリピート演習にはあまり多くの学習効果が望めません。
言うまでもなく、択一式試験では肢単位ではなく、問題(=5肢)単位での正答率によって合否が決まります。例えば、令和5年度試験の合格基準点は45点(65%の得点率)でした。
それでは、この年の合格者は225の選択肢(全体の65%)の正誤の判断が正しくできたから合格できたのでしょうか?もちろんそうではありません。
★ 組み合わせ問題で、正誤の判断のつく記述だけから選択肢を絞り込んで解答した場合
★ 5肢の全てが初見のもので判断が不能であったところ、2割の確率でのまぐれ当たりを狙って解答した場合
こうした場合でも、問題単位での評価となる本試験では正答に至ることができます。つまり、本試験で合格するために要求される力とは、全ての記述の正誤を正しく指摘できる力ではないということです。
過去問題集に収録された問題の中には、今後はもう出題されることがないであろう、突発的にその年だけに出題されたというものがあります。そうした問題も含めて肢単位での正答率を100%にしようとして、有限な時間を過去問題集に投入することは有意義ではありません。
肢別過去問題集の正答率が80%~90%にまで達したならば、以後は学習の中心をテキストに移しましょう。問題演習は、このタイミングで対象を過去問から模擬試験に移すことになります。
したがって、時期的な1つの目安としては、模擬試験の始まる前の6月末までに過去問正答率を90%にすることを目標にすれば良いでしょう。
誤りが見抜ける程度までのブラッシュアップを
上で示した過去問正答率とその到達時期は、あくまでも学習を進めていく上での指針とするものに過ぎませんので、ここで数値に厳密に拘る必要はありません。
過去問題集でコアとなる知識を固め、肢単位で一定の正答率を挙げられるようになれば、先に挙げた問題単位での正答率が飛躍的に上がります。これは、誤りを見抜く精度が高まることによって、一定の選択肢を切ることができるようになることによるものです。
一般的に、正しい記述を正しいと絶対的に言い切ることは非常に難しいです。逆に誤った記述については、その誤りを正確な記述に改めることは難しいですが、「何かが違うと思う」という漠然とした判断ができるようになること自体はそう難しくはありません。
実は合格者というのは、この漠然とした判断が高い精度で正解に結び付く人のことなのです。この判断自体は肢単位での正答率が一定程度になれば可能になるものですが、判断の精度を高めるためには学習を過去問の次のステップへと進めることが必要になります。
過去問の回転数と正答率に拘ってはいけないという理由はこの点にあります。
過去問や予想問題集などを数多く何回転と繰り返したとしても、やはりそれは雑多な点の知識の集合体にしかなりません。
点の知識では試験問題の揺さぶりに対応できないことは、近年の問題を見れば明らかです。
点を線へ面へと変えるものが、テキストの体系立った記述です。
流れの中で点を捉えましょう。
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