○か月、○年という短さを強調する謳い文句
Chapter 1の「学習を開始する前に考えるべきこと」では、この合格マニュアルの考え方のスタンスとして、「短期合格」ということを掲げました。
すなわち、初学者・既習者の別を問わず、次に行われる試験での合格を目標にするということですが、これに関して1点誤解を生じかねない点がありますので、ここで補足いたします。
資格スクール等の合格体験記や出版されている受験用の書籍、ネット上の合格者ブログなどで、よく
「○か月で一発合格!」
「1年のうちに社労士と○○にW合格!」
という文字が躍っているのを目にします。
こうした文言を見て単純に「すごいな」と思った経験や、「頭のいい人が世の中にはいるんだな」と感じた経験はないでしょうか?
これまでの受験回数が複数回に及んでいる方などは、自身の歩みとこれらの合格者を比較して、「ああ…自分はダメだな」と肩を落とし、自信とやる気が減退したネガティブなモヤモヤ感だけが残るといったことになりがちです。
しかし、これは良くありません。受験機関の宣伝に扇動されていることもそうですが、「○か月」や「1年」といった”受験期間”に心を乱されている点が良くないのです。
目指すべきは”短時間合格”であるが、期間の要素も重要
合格までに要した学習量は、”受験期間”ではなく、”学習時間”で図られるべきです。
つまり、早期での合格を謳い文句にするのであれば、それは、
「500時間の学習で合格!」
「1日10時間、6か月の集中学習で、社労士と行政書士にそれぞれ1回でW合格!」
などのように、合格までの総学習時間が推計できるものでなければ比較のしようがありません。
そもそもが、毎日が残業続きで帰宅してから机に向かう時間が午後11時という方と、仕事を辞めて受験にほぼ専念できる方では、合格までの”期間”を比較しても意味がありません。1日の中で学習に割くことのできる時間の前提が全く違うわけですから。
したがって、「短期合格」を目指すというのは、自らに与えられた環境下で最短時間での合格を目指すという意味になります。目指すべき短期合格は”短時間合格”です。
ただし、仮に同じ900時間での合格であっても、1日3時間×300日と、1日1時間×900日の学習とでは、絶対に前者の方が合格可能性は高いです。なぜならば、記憶の持続性の問題やモチベーションなどの他の要素によっても合格は左右されるからです。
この点を併せて考えますと、短時間での合格を実現するにあたっては、その短時間学習は短期の間に行われる方が良いということになります。
上では「自らに与えられた環境下で最短時間での合格を目指す」と申しましたが、より確度の高い合格を志向するならば、その目標年度は次の試験に設定する必要があります。
だからこそ、Chapter 1の「合格に必要な学習時間をとれるのか?」で述べた、自らを合格そのものを可能とする環境に置けるかの検討が必要になるのです。自らがその環境にないという場合は、状況が改善するまで受験を見送るということは懸命な判断だと思います。
「○か月で一発合格!」の方が、隙間時間を上手に利用しての1日1時間の学習のはずがありません。扇動的なフレーズに影響を受けないよう注意が必要です。
「何年も学習を続けているのに受からない」と憤る方の中には、GW明け頃からは真剣に学習するものの、それまでの時期には長く学習から離れている期間があるという方がいらっしゃいます。
長期離脱の都度、知識レベルが低下していることの繰り返しでは「何年も学習している」ことにはなりません。
年度末は、これから学習を始めよう(再開しよう)という方から、「今から初めても間に合いますか?」とよく聞かれる時期です。
可能性だけを言えば、現に毎年初学で○か月一発合格という方がいらっしゃるわけですから、もちろん間に合います。
しかし、答えは自身の状況により判断するものとなります。
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