受験する・しないの判断基準としての難易度
社労士試験の受験を考えておられる方(特に初学者の方)にとって、これから学習を開始して臨む試験の難易度が一体どれほどのものであるかということは、当然に1番の関心事項であるかと思います。
やってみていけそうであればやるけれども、ダメそうならばやらないと考えることは、実に理に適った適切な判断です。しかし驚くべきことに、この難易度の検討もないままに社労士「でも」取ろうかと考えて多額の費用を投じ、学習を開始する受験生が多いのです。
受験生活の途中で自分には合格が困難な試験であると認識して学習を中断したとしても、費やしたお金はおろか人生の貴重な時間は返ってきません。だからこそ、「自分に受かるような試験なの?」という事前の検討が大切です。
試験の難しさについて考え、「やる・やらない」を決定するためには判断材料が必要です。そこで、まずは試験センターが毎年公表する合格者発表のデータを見てみましょう。
第55回(令和5年度)社会保険労務士試験の合格者発表から
令和5年度の結果は次の通りです。
受験者数 42,741人(前年 40,633人)
受験率 80.2%(前年 77.8%)
合格者数 2,720人(前年 2,134人)
合格率 6.4%(前年 5.3%)
なんと、10%にも満たない低い合格率です。と言いますか、この四半世紀で10%を超えたことがあるのは1回だけです(平成19年度 10.6%)。数字だけを見ればとてもやってみようとはならないのではないでしょうか?
それではこの2,720人の合格者とはいったいどのような属性の方なのでしょう?
同じく試験センターが合格者発表で公開しているデータです。
年齢別構成では30歳代と40歳代で6割強を占めますが、50歳代以上の層にも非常に多くの合格者がいらっしゃいます。ちなみに、合格者の最年少者は21歳、最高齢者は76歳でした。
ここでは、最も受験に適性のあると思われる20歳代の層に合格者がそう多くないことが特筆されます(そもそも受験者数の少ない層でもあります)。このデータで見る限り、高校・大学受験で訓練されてきた若年者層に特段有利な試験だということはないようです。
また、職業別構成では会社員が約6割、その他の職業従事者も含めて、合格者の多くが何らかの仕事を持ちながらの受験であることがわかります。このことは、働きながらでも十分に合格が可能な試験であることを示しています。専業受験生は極めて少数派です。
男女別構成も公表されていますが、これが試験の難易度を考える上での大きなヒントになることはなさそうです。
試験の難易度をどのようにして計るか?
この公表データの中には、合格に至るまでの受験回数や合格者の最終学歴などはありません。そして、データだけを見ても「この試験がどの程度難しいのか?」や「相当に低い合格率を突破した方の属性」がよく見えてきません。
社労士試験を受験しようかと検討中の方が、その試験の難しさについて考えて「やる・やらない」を判断する材料としては、これだけでは不十分と言えます。
このことを考える上では、毎年4月に出される試験の概要と合格発表時に公表される合格基準を見た上で、直接にはデータに表れてこない部分の検討を行うことが重要になります。
引き続き、次の「合格基準点から探る試験の難易度」の項で見ていきたいと思います。
と同時に、どれをとっても試験結果に対する勝因にも言い訳にもなりません。
合格者に共通する要素がこれだというものがないからこそ、合格に必要な要素は何か?と学習開始前によく考える必要があります。
大勢の参入者と脱退者。
とりわけ、【なんとなく】のそうした方々の多数変動があっての人数です。
【年間を通じて意識的に】学習できる人は殊の外少なく、これだけで合格可能性は高まります。
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