書いてある内容のみを学習の対象とする
学習開始から科目が順調に進行してくると、科目間で類似の規定や取り扱いの違う規定があることがわかってきます。疑問点や不明点もこの頃から増えてきますが、テキストや問題集に取り組むときや、資格スクールで講師に質問をするときには、ある注意が必要です。それは、
「テキストや過去問といった教材を学習するときは、そこに書いていない内容についてはあれこれと考えない。」
というものです。受験哲学編(Chapter 2 基礎学習期のマインドセット)の「合格できない受験生の無自覚要因㊦」の中でも一部触れたことですが、ここではより具体的な例で説明したいと思います。
例えば、過去に何回も出題されている頻出事項として、テキスト中に
という記述があったとします。この情報に接したときに、受験生として行うべき学習は、
② A・B・C と D・E で結論を異にする理由を暗記の助けとして理解する
ことの2つのみです。②の理由付けについては、主としてスクールの講師等が説明するものを吸収することで身に付きます(独学者の方がこれを独力で行うことは難しいかもしれません)。
いずれにしても、ここでの学習対象は、あくまでもテキストに記載のある事項であるA・B・C・D・Eの5つに限定するべきです。
向学意欲はテキストの記述の理解・暗記に向ける
このときに、「では、FやGの場合は該当するのだろうか?」などと、テキストに記載のない内容に考えを巡らせる方がいらっしゃいます。そのことを講師に直接質問される方も非常に多いです。
なかには、この質問と共に、A・B・CとD・Eとで結論が分かれている現状への問題提起と今後のあるべき形を、自身の感想としてお話しになる方もいらっしゃいます。
講師に対してテキストに記載のないFやGのことを質問したくなる理由は、学習が進んで複数の科目を履修してきたことの中にあります。つまり、
「他の科目でFやGに関する似たような記述があったように記憶しているので、こっちではどうなのかと思って…」というのが、このような思いに至った理由です。
他の科目で学習した内容が記憶の片隅に残っていること自体は、社労士試験の学習に真剣に取り組んでいることの何よりの証左です。ですが、その内容を安易に他科目の学習に当てはめた場合には、学習の方向性が受験から外れてしまう危険性があります。
「あちらで必要とされることであるならば、こちらでも必要となることなのではないか?」
「それでは、この場合はどのようになるのか?」
詳しくは㊦の項で述べますが、実はこうした思考様式は、合格した後に社労士実務の中でとることとなるものです。受験生としてとるべきものではありません。
その後学習がさらに進んで10科目の履修を終えた後、直前期の学習においてはテキストに記載のある内容だけでも理解・暗記ができていないことに全受験生が悩むことになります。したがって、テキストに記載のない内容にまで意を払うような時間はありません。
学習が進む中で生じる向学意欲は大いに結構なのですが、そのことの学習は合格した後に行うものとしましょう。
㊦の項に続きます。
受験対策とは、結局のところ
・過去の出題実績に基づいて
・今後出題されそうなところを
・自身に与えられた残り時間の中で
・優先度の高い順番に暗記していく
ただこれだけの作業と言えます。
作業で大切なことは仕上がりの完成度であり、法的な枠組みでの理解や納得感などは二の次と考えることも必要です。
・ダンテときたら? →神曲
・エミールは? →ルソー
・ゲルニカに関係あるのは? →ピカソ
学生・生徒は、読んだことがない又は意味のわからないものであっても、受験に必要な知識は「なぜ?」に拘らず、素直に覚える学習を繰り返します。
不要な知識には手をつけません。
これが受験の本質です。
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