選択式過去問の検証から
社労士受験においては、他の法律資格の学習においては半ば当然とされている「条文にあたる」ことの重要性がそれほど主張されません。
私自身、個人的には受験六法などを必須のものとは考えておりませんが、テキストに記載のある条文については、これをきちんと読み込むが極めて重要であると考えています。
この重要性は、とりわけ選択式試験の問題を見ることで実感することができます。
1 被保険者であって、[ A ] に雇用される者のうち、次の①又は②のいずれにも該当せず、かつ、[ B ] でない者が失業した場合には、一定の要件をみたせば、特例一時金が支給される。
① [ C ] か月以内の期間を定めて雇用される者。
② 1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者。
正解は、A:季節的、B:日雇労働被保険者、C:4 です。
この問題は比較的簡単な部類で、語群の中から選ぶ実際の出題形式では、より確実に正答が得られると思います。
短期雇用特例被保険者となるための資格要件は、
でした。
4か月という数字が記憶に残っていれば、Cの空欄を埋めることに問題はなかったかと思います。
それでは、次の問題はどうでしょうか?
1 被保険者であって、季節的に雇用される者のうち、次の①又は②のいずれにも該当せず、かつ、[ A ] でない者が失業した場合には、一定の要件をみたせば、特例一時金が支給される。
① [ B ] の期間を定めて雇用される者。
② 1週間の所定労働時間が [ C ] である者。
先程とは空欄の位置が変わっていますが、Bの欄で「4か月以内?超?未満?以上?」と迷いませんか?
Cの欄でも「30時間以上?未満?超?以下?20時間という数字は必要?」と迷いませんか?
もしも、語群にこれらの紛らわしいものがズラっと並んでいる場合には、この問題は先の過去問とはうって変わって難易度の非常に高いものになります。
本試験で出題された場合には、3点の基準点確保が危うい問題になるでしょう。
この問題で迷いが生じてしまう理由は、テキスト等で条文の表記のされ方を確認しないままに、意味や概念だけを過去問演習を通してや、まとめ本などにあるわかりやすい図表のイメージで覚えていることにあります。
条文そのままの出題に潜む思わぬ落とし穴
短期雇用特例被保険者となるための資格要件は、条文上では、平成23年度の過去問と同じく、
という書かれ方をしています。
「①または②のいずれにも該当しない」という書き方から、「①でないものと②でないものの両方に該当する」という結論が導かれることになります。
そして、多くの受験生はこの後者のわかりやすくまとめられた結論の方だけを学習しています。
こうした場合に、条文の表現でそのまま出題されることが多くある選択式試験では、思わぬ落とし穴にはまってしまうのです。
Chapter 2では「テキストを読み込むことから逃げない」ということの重要性について述べていますが、このことが重要であることのもう1つの意味がここにあります。
引き続き、㊦の項でも選択式試験の落とし穴について見ていきます。
社労士又は有資格者の持つ知見は、あくまでも客観的な法令を根拠に置いて発揮される必要があります。
情緒的な他者への共感や契約欲しさの拝金主義によるのではなくです。
法令に基づくからこそ、そこに問題のあるべき解決策が示されます。
だから、小難しい法令にも熟達しなければならないのです。
日々雇い入れられる者に解雇予告が必要となるのは、継続雇用1か月超と30日超のどちらでか?
何度も見た、聞いたはずの知識です。
でも、ここで迷ってしまいます。
「これはもう大丈夫。それよりもまだ知らないことが…」という超直前期の学習が知識の穴を作ります。
それが基本と呼ばれる知識です。
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