なぜか受験生の多くに共通していた誤りのパターン
平成30年度の国民年金法の選択式問題は全体正答率が低く、2点への基準点引き下げが行われました。
この問題では、ある共通の誤り原因が多くの受験生に見られました。
昭和25年4月2日生まれの者が、老齢基礎年金の支給繰下げの申出をした場合、老齢基礎年金の額に増額率を乗じて得た額が加算されるが、その増額率は [ D ] に当該年金の受給権を [ E ] を乗じて得た率をいう。
解答の候補になりうる語群を抜粋すると、次の通りです。
② 100分の11
③ 100分の12
④ 1000分の5
⑤ 1000分の7
⑪ 取得した日から起算して当該年金の支給の繰下げの申出をした日の前日までの年数(1未満の端数が生じたときは切り捨て、当該年数が5を超えるときは5とする。)
⑫ 取得した日から起算して当該年金の支給の繰下げの申出をした日までの年数(1未満の端数が生じたときは切り捨て、当該年数が5を超えるときは5とする。)
⑬ 取得した日の属する月から当該年金の支給の繰下げの申出をした日の属する月の前月までの月数(当該月数が60を超えるときは、60)
⑭ 取得した日の属する月から当該年金の支給の繰下げの申出をした日の属する月までの月数(当該月数が60を超えるときは、60)
ごく普通に受験対策を積んで試験に臨まれた方であれば、⑤と⑬の2つを選ぶことは困難なことではありません。
繰下げによる増額率は1000分の7で、月数は申出を行った日の属する「月の前月」までの最大60か月(70歳まで)です。
後者は平成22年度の択一式試験問2ーDでも出題されています。
しかし、この年の試験で多かった誤りというのは、正答となる⑤と⑬を正しく選べなかったというものばかりではありませんでした。
実は、[ D ] の欄と [ E ] の欄に入る語句を逆にしてしまったという方が大変に多かったのです。
問題文に沿わない答案解答は自分本位でしかない
[ D ] の欄に⑬、 [ E ] の欄に⑤を入れると、Eの前後が次のようになります。目的語が2つある文法的におかしな日本語となり、これは誤りとわかります。
このおかしさに気付かない理由は、本試験という場で緊張状態にあることだけが原因ではありません。
[ D ] の欄と [ E ] の欄に入る語句を逆にした原因は、日常の学習の中で「繰下げのときは1000分の7をかける」として覚えていることにあります。つまり、後に1000分の7を乗じるという捉え方が問題を解く上での先入観になっていることで、問題文をよく読んでいないのです。
この問題を評して、「出題者の意地悪なひっかけ」としているものもありますが、それは違います。
出題者はこの [ D ] と [ E ] の欄を、国民年金法施行令第4条の5第1項の条文通りに素直に出題しています。
出題者の立場で言えば、受験生が条文から離れた部分で概要だけを理解して、その思い込みから自分で引っかかっているだけじゃないかということになるでしょう。
試験問題を解く際には、受験対策を通じて培われた思い込みを排して、フラットな気持ちで問題文に向き合う必要があります。
あくまでも基準は問題文にあります。
初学の頃と受験経験を重ねてからを比較すると、同じ過去問を解くにもだんだんと問題文を読まずに解答するようになっています。
問題文の書き出しを見た瞬間に答えがわかってしまう問題こそ、特に問題や解説の文章をしっかりと読むことです。
このことが、特定項目に対する思い込みの排除に繋がります。
近年の過去問を年度別でみると、単純に【小難しい内容の大量の文章を根気強く投げ出さないで読む力】が必要なのだとわかります。
法的知識以前に、まずは初見の文章を読まないことには題意を掴めません。
新聞、書籍、取扱説明書等。
活字離れが指摘されて久しいですが、意識的に文章を読みましょう。
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