模擬試験問題を契機としてテキストに立ち返る
この項と続く㊦の項の2回で、本試験まで残り1か月を切った時期に、その年に実施された模擬試験を使って全科目を学習する方法について説明します。
(⇒参考:Chapter 2「模擬試験教材を学習の主軸に据える」)
この時期の教材に模擬試験を用いることの最終的な目的は、出題可能性の高い論点とその関連項目の正確な暗記にあります。
つまり、模擬試験を通じて、どの論点が重要かという点とその周辺知識が何かがわかれば良いわけです。そして、この目的の限りにおいては、
⇒ 解答を見て答え合わせをする
⇒ 解説を読んで間違えた問題を中心に理解する
という迂遠な過程を辿る必要はありません。
こうした学習方法(解き直し)は一般的なものですが、試験まで残り1か月を切った時期に行うには、時間的なロスが大きすぎます。自力で考えて解くという時間がロスなのです。
この時期に用いる模擬試験や演習教材は、全て問題を読んだら続けて解答・解説を熟読するという方法で進めて構いません。そして、解く時間をカットした分は、解答・解説を熟読した後に行うべき学習に充てます。
その学習とは、解答・解説集の”読書”によって把握した重要論点や暗記事項で、自分が今も理解・記憶できていないものを、実際に覚えて口に出して言えるようにすることです。
具体的な方法としては、解答・解説集の中で定着が不十分な部分をテキストに立ち返って探します。重要な部分は何度も読んだはずのテキストの太字部分(例:数字、行政官職名、用語)です。
周辺事項も含め、それらの太字部分を空欄にしたときに、そこに書いてあることを正しく指摘できるのか?このことを確かめる基礎トレーニングを重ねて不完全な記憶を完全なものに変えていくことこそが、この時期に行わなければならない学習です。
そして、この学習の過程で暗記事項のリスト化も行っていくことになります。リスト化の具体的な方法については、㊦の項で説明します。
(⇒参考:Chapter 2「最終暗記事項をリストアップする」)
試合形式の練習ではなく基礎トレーニングを積む
超直前期には、何度も間違えた過去問のみをあともう1回転させるなど、解くことに主眼を置いた学習を行う方が少なくありません。
しかし、この問題を解くという学習はゲーム感覚で進めることができ、採点を通して自己の成長や安心を感じることができることから、実は楽しくてラクな学習方法なのです。例えるならば試合のようなものです。
これに対して、本当に辛い学習とは、人間が忘却の動物であることや自分が能力的にそう高くないことを痛感させられるような学習です。これが上で挙げた基礎トレーニングとしての学習です。
超直前期には、この単調ゆえに過酷なトレーニングを積む学習が必要となります。また、このトレーニングの継続によって、本試験で要求される脳の持久力も培われます。
模擬試験教材の使い方として、まずは「問題を自分で考えることなく、すぐに解答を見ることは悪いことだ」という思い込みから脱却しましょう。
模擬試験はあくまでも重要事項を振り返る1つのキッカケと考えて、即座にテキストと連動した学習を行うことが大切です。なお、テキストに記載のない初出事項については読み流して結構です。
㊦の項に続きます。
模擬試験は自分の弱点を客観的に指摘してくれる貴重なツールです。
だから、弱点を殆ど指摘してくれない高得点よりも、散々にダメ出しされる低得点の結果の方が価値があります。
また、模試のために予習をして獲得した高得点よりも、模試の低得点から復習を積んで築いた力の方にも価値があります。
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