ポイントは「同時・ランダム・高速」
資格スクールの一般的な年間講座を例に挙げると、3月~4月末までに全10科目の基礎講座が終了します。
ここから先は2巡目の学習として直前対策の種々の講座が始まるわけですが、どの学校でどの時期にどの講座を受けられる方であっても、こと自宅学習においては1つ注意していただきたいことがあります。それは、知識の忘却対策として、少しずつでも良いので毎日全科目を学習するということです。
既習科目に忘却対策が必要な理由とその方法については「基礎学習期にも記憶の保守点検を行う」の項で述べていますが、4月からはこれを10科目に広げて行うわけです。
このように申し上げると、多くの受験生の方は「時間がなくて全科目を学習する時間などはない」と思われることでしょう。そのように考えるのは、テキストであれ過去問題集であれ、1つ1つの科目でまとまった分量を学習しようとするからです。
これでは当然に学習の速度が遅くなってしまい、1日に全科目を学習することは時間的に不可能になります。
ここで必要なのはランダムなつまみ食い学習です。つまり、その日の学習時間が仮に1時間しか取れない場合は、10科目×過去問3肢ずつを学習するなどとします。過去問のセレクトはランダムで構いません。
なお、このときにChapter 2の「論点を簡素化・2択化して押さえる」の項で述べる重要論点リストがあれば、一層効果的な短時間学習が可能になります。とにかく、特定の科目を学習しない日を作らないことが大切です。
4月からこの全科目ランダム学習を行う1番の利点は、試験の全出題範囲を大雑把ではあっても早期に1回転させることができ、そのことによって本試験までに何回転も知識を回していくことができる点にあります。
Chapter 2の「復習はのり付け作業のイメージで行う」の項では、こうした学習を繰り返すことによって全体としての記憶が強固なものになることを述べています。
各科目のテキスト後半に書かれている内容には単純で細かな暗記事項が多いですが、科目間での規定の類似性が紛らわしいこれらの内容は、そのいずれもが頻出事項です。
1問の持つ価値は難解な事例問題も単純な条文問題も同じですから、全科目同時学習によって科目間の共通部分や違いを早期に掴み、理解力と記憶力を高めていきましょう。
不明瞭な知識を明瞭なものに
4月から行うべき受験対策の指針は、不明瞭な知識を明瞭なものにすることにあります。
ネット上では「試験日まで残り100日」というフレーズが、合格レベルと現在の実力レベルとの差異に対する危機感を語る言葉とセットでよく登場しますが、合格者でもこの時期は殆どの方があやふやな知識の状態でいるものです。
そもそも100日後の合格答案でも3割の問題は間違えるのですから、この時点では5〜6割も間違えて当然です。試験100日前での水準に100日後の水準を期待するから、その差異に危機を感じるのです。
社労士試験の得点力は多くの会社の退職金制度と同じで、最後に近づくほどにグングンと伸びます。ですから、この時点での自分が合格レベルに程遠いなどと言って悲嘆に暮れていること自体に意味はなく、明瞭な知識を増やす努力を重ねるのみです。
10科目の基礎学習を終えた後は、こうした心積もりで10科目の並行学習を行うことを基本戦略としてください。
多くの方は、日頃の学習において体系的な理解による納得感を重視しています。
1日に複数の科目なんてこなせない!という理由がこの点です。
しかし、本試験では断片的な論点が10科目同時に問われます。
したがって、毎日全科目で数字を1つずつ覚えるという学習は、本試験の性格にも沿うものなのです。
「毎日10科目を学習することは可能か?」
というのは、何をもって1科目を学習したこととするのかという自身の中での定義付けによるところが大きいです。
精読や全問解答に拘れば時間がありませんが、手書きのメモの拾い読みを3ページ×10科目ならばできるはずです。
それで10科目学習達成です。
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