重要事項の体系的理解とビジュアル記憶効果
「過去問学習は未来問を考える発想で」の項では、過去問の効果的な使い方の1つとして、出題された内容をテキストの該当箇所に書き加えるということを挙げました。テキストに過去問の出題部分やひっかけ論点をマーキング・転記するこの情報の一元化を行う理由は、大きく分けて2つあります。
② 一元化の作業過程でテキストに何度も目を通すことになるため、その部分の知識が画像として脳内に強烈に印象づけられる
まず、①についてですが、例えば労働基準法の最近10年分の過去問情報をテキストに一元化すると、各項目の重要度が一目でわかり、今後テキストを読む上での方針が立ちます。
(一元化の具体的なやり方については「テキストへの情報の一元化の方法㊤・㊦」の項で述べます)
一例を挙げると、次の通りです。
→頻出分野として熟読する必要あり
★ 任意貯金はテキストへの書き込みが全くない
→重要度の低い分野として短時間の斜め読みで十分
★ 端数処理の5パターン中4パターンが平成28年度までに出題されていたところ、残りの1パターンが平成29年度に出題された
→出題のあった分野は未出題の周辺知識を含めて熟読する必要あり
このように、自分の手でテキストに少しの加工を施すことによって、その圧倒的なボリューム感に学習意欲を削がれかねないテキストの平板な記述も、メリハリのある血の通ったものへと変わります。
また、バラバラな知識の集合体である過去問題集から得た内容を、テキストの体系的な記述の中で押さえることができます。加えて、ここから将来の出題を考えることができるようになります。
次に②については、ある論点についての自分の知識が、慣れ親しんだテキストの該当部分のレイアウトと共にビジュアルとして記憶されるという効果があります。
実力者は試験会場で、「これは確かテキストの右ページにあった表の下に書いてあったあれだな」という風に、残像として脳内に残っているデータを基にして、判断に迷う問題においても高い確度で正解肢を手繰り寄せているものです。
このときの脳内での知識の検索先が、模擬試験であったり過去問題集であったりなどと複数存在する状態では解答は導けません。検索先を過去問知識も含めて全てテキストに一本化することによって、そのビジュアルイメージも含めた記憶が強化されます。
2度の過去問演習より1度の一元化作業を
この情報の一元化には、過去問情報をテキストに集約することとその集約化された情報のあるテキストを何度も読み返すことを通じて、結局過去問を何度も解くことと同様の効果があります。
むしろ、過去に出題された問題をテキスト上の体系的で汎用性のある知識として確認することには、これをそのまま演習教材として用いること以上の利点があります。過去問を2度解く時間と、過去問情報を1度テキストに転記する時間が仮にイコールであるとするならば、後者の学習をお薦めします。
情報の一元化されたテキストを、模擬試験や答練などの復習の都度何度も確認することによって、重要知識の記憶は強靭なものになります。
情報の一元化を行った後のテキストを内容に強弱をつけて読み分ける上で、弱の部分は読まなくても良いということにはなりません。
読まなくて良い内容であれば、テキストに掲載されないはずです。
選択式試験では、過去に択一式試験での出題実績のないものが多く出題されていますので、無視はできません。
1肢が5〜8行の長さで構成されている初見の本試験問題。
これを1問3分弱で解答できるようになるためには、文章の中の装飾部分を外したコアの部分に目がいくようにならなければなりません。
コアの部分=論点はテキストの色字・太字部分にあります。
最初は過去問中心、最後はテキスト中心の学習を。
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